佰食屋に学ぶ売上を減らすビジネスモデル

先日Zuu Onlineのウェブセミナー『「佰食屋」に学ぶ、売上を減らすビジネスモデルとその先』へ参加しました。
佰食屋を経営する株式会社minitsの社長である中村朱美さんが貴重な講演をしていただきました。
私自身も店舗を経営されている方にとっても非常に有益なセミナー内容でしたので記事として共有をいたします。

佰食屋のビジネスモデルから『1日100食』と制限を設ける上でのメリット、コロナ禍での葛藤と打開策について書かせていただきます。

■佰食屋の紹介・どのようなビジネスモデルか

京都にあるステーキ丼専門店の佰食屋。
創業者の中村朱美さんは、二児の母で当時「自分が働きたいと思える会社をつくろう!」と考え、28歳で旦那さんと株式会社minittsを立ち上げたそうです。
・国産牛のステーキ丼が名物。
・一日100食限定で売切れたらお終い
・営業時間11時~15時(14時30分ラストオーダー)のランチのみ
・飲食店では珍しい週休2日制、出勤時間も従業員が選べる、有給取得は上長承認要らずでポストに申請書を入れれば、自由に取得できるという超ホワイト企業
・働きやすさから主婦や高齢の方も従業員として働いている

1日100食限定のお店。
だから、ひゃくしょくや。
https://www.100shokuya.com/about/

売上を追うのをやめたら、黒字続きで店舗が拡大。「佰食屋」が教えてくれる“逆転の成長論”
https://r25.jp/article/751676457121473050

■100食にする4つのメリット

一日100食限定とすることのメリットは4つあります。

①フードロスがほぼ0であること
・店内には冷凍庫が無く、冷蔵庫も空っぽです。
100食分の仕入れしか行っていないからこそ、新鮮で安全な食材を使った料理を提供することが可能です。
・仕入れ単価を下げて、残った食材の無駄な部分についてはスープに入れることでロスをほぼ0にしてます。

②希少価値性が生まれ、集客効果が高い
『ランチしかない』『百食しかない』ということで自然と希少価値が生まれ集客効果があります。ステーキ丼を食べるためにはお店に並ばないと行けません。希少価値が生まれることで天候が悪い大雨の日や人が出歩かないような時でも『こんな時ならお店空いてるかも』という心理が働く為、他の飲食店が集客に困る日などでも集客が期待できます。

ただデメリットもあります。
100食限定という制約だけでは人が出歩かないような日、何かお祝い事があるハレの日は集客が強い一方で日常的な集客には弱い点です。日常集客の打開策として一般的な飲食店の原価率が30%の所、佰食屋は原価率50%。原価率50%にすることによって『国産牛の美味しいステーキ丼をお腹いっぱい食べれて、しかも高くない』とお客様の満足度を高めます。お客様の満足度を高めれば、人伝いにどんどんお店の情報や口コミが広まっていきます。
人伝いによってお店の口コミがどんどん増える為、一般的な飲食店のような広告販促費が掛からないのです!

中村さんとしては原価の中に広告販促費を含めて戦略を打っているという点、また一般的な広告販促を打つ場合はどんどん新しいものを取り組んでいかなければ効果が上がらない(SNSなど新しいツールが世の中に出回るため)、また効果的な広告販促には専門的なマーケティング知識も必要となる点から、あえて原価率50%という戦略を行ってます。

③最小コストで最大利益化毎日100食売れれば、絶対黒字になる仕組みとなってます。
1.従業員一人当たりで20人の対応が最大利益
それ以上の対応数の場合、店内の接客が追い付かなかったり、会計を間違えたりなど発生する。
2.10坪で家賃10万円の強み。
3.午後2時30分をラストオーダーとしてる。
店内は12席(4席×3)だから100食売る為には11時~14時30分までに総入れ替えで7回転もしなければならない。
7回転させる為に30分総入れ替え制度があります。ただ7回転させても4人掛けの席に4人が座るとは限らず店内飲食のみでは100食に届かない為、テイクアウトを実施。テイクアウトで3割~4割の売上比率を占めるそうです。近所の方は並ばずに食べれるという点からテイクアウト利用が多いという話でした。
4.整理券を発行するからキャンセルを防げる。(電話予約、ネット予約は不可)
・電話やネットでの予約はキャンセル率が高かったり、インターネットが苦手な高齢者や言葉の読めない外国人が利用できません。
整理券を発行することで毎朝9時半から、お客様と顔を併せて整理券を渡してる為、キャンセルしづらいという心理が働きキャンセル率を低くできることがメリットとして挙げられます。またインターネットが苦手な高齢者や言葉の読めない外国人、耳の悪い方でも整理券を配布する仕組みがあれば店内で食べることができます。
・行列できないからコロナ対策にもなる。
・遠方からお越しいただく方が朝9時半に来てもらうのはキツイのではないか?という質問をよく頂くそうです。
そこはあえてお店側がお客様を選定されてます。
お店に対して理解のあるお客様だけに来てもらえるから理不尽なクレーム、トラブルを防げて、その結果従業員にも還元できるというメリットがあるそうです。

④早く帰れる
早く帰れる為、働ける人の幅が広いというメリットが生じます。
勤務時間で一番長いのが9時~17時45分。
正社員を含む従業員には自己決定権があり、何時から何時まで働くかを自分で選ぶことができます。まさに働き方改革。
賞与3回、昇給1回、360度成果もあります。
有給取得の際は上司への事前申請が必要なく、申請書をポストに入れるだけ。このような働き方をする事によって、
やらされ仕事ではなく、自らが選んで働くことで積極性が生まれると話されてました。この部分は非常に共感です。

■コロナ禍での葛藤

コロナの影響が大きくなった2020年3月。
佰食屋は繁華街に2店舗、住宅街に2店舗運営してました。
繁華街の店舗家賃は住宅街の4倍となります。
今まで毎日100食を売切ってましたが、
コロナの影響で下記のような店舗売上となりました。
・繁華街の2店舗 売上20%
・住宅街の2店舗 売上100%

売上100%超え2店舗分の利益は一瞬で無くなってしまう程の打撃。
中村さんは助成金や補助金など、何度も何度も計算しても残り4か月でキャッシュが無くなり、会社が倒産に追い込まれるという計算となり、それに対しての打開策を考えても考えても思いつかずの状況でした。
税理士やコンサル会社へ相談をすると、繁華街2店舗を閉めるしかない。という回答を貰いました。

中村さん曰く、
『そんなこと言われなくても死ぬほど分かっている。経営者であるからこそ、そんな判断できない。2店舗分を閉鎖したら、今まで一緒に頑張ってくれた従業員の雇用はどうなってしまうのか。』と頭を抱えて考え続けました。

そんなとき、中村さんの苦しんでる姿を従業員が見て、
『私、転職するよ!』と中村さんに言ってくれたそうです。

『もうみんな分かっていた。どんなに頑張っても、4店舗の経営を続けることが難しいことを。あえてみんなで中村さんに聞こえるように話すことで、2店舗閉鎖という決断の背中を押してくれた』

セミナーでは、従業員みんなが揃って映っている写真を見せてくれました。
みんなが揃った写真はこれが最後となります。

私はこの話を聞いて、中村さんの従業員ファーストで考える姿勢、みんなで頑張って長い間やってきたという思い、気持ち、パソコン画面を通り越して伝わってきた為、思わず感動してしまいました。

決断と打開策

中村さんは4月の緊急事態宣言が発令される前に2店舗を閉める決断をした。早めの決断をしたこと、会社都合での解雇とすることで助成金などを利用でき、給与が通常よりも1か月余分に支払われるよう従業員へ還元されたそうです。

お店を開けても閉めても休業しても雇用調整助成金を利用しても緊急融資を受けても、それを返済できる見込みが立たない。(この2店舗の家賃の減額交渉もしましたが、交渉不可でした。)仮に緊急事態宣言が解除されても、人々の心理的にすぐに元には戻らない。きっと、コロナ前の状態に戻るには1~2年、もしくは戻らないかもしれない。
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私には悩んでいる時間がありませんでした。
休業をして、雇用を維持しようと頑張れば頑張るほど、全員倒れてしまう倒産の危機が高まること。
全員倒れる未来が見えてしまう。すぐそこに。
https://www.facebook.com/akemi.nakamura0731/posts/3035420699882956

コロナ禍のピンチ打開策

・テイクアウトのみに切り替えてステーキ丼のみを販売する
・テイクアウト販売のみの為、オペレーションも簡易化でき、今まで5人で営業していた所を3人で営業できる。
・地元の人がお店のことを心配し、駆けつけてくれて、注文を沢山してくれた。

その結果、5/24日まで午前中の予約のみで100食完売。
ここで生産性の向上ができたと感じ、また日曜日は人員不足になる事を踏まえて
佰食屋1/2(1日50食で完売)を新たにオープンして毎日2人出勤、日曜日は佰食屋1/2を定休日にして他の店舗へ人員を割くことを行い、日曜日は従業員が定員5人よりも多くなってしまうこともある程、問題が解決しました。

中村さんは現在コロナでの経験を活かし、有事の際のリスク対策、経営手法に力を入れて、従業員を絶対に守るという姿勢で経営をされています。
現在のコロナ3波、4波が生じることは勿論、随分前より対策済であること、またこれからの季節は災害も多くなると統計からも分かっていた為、誰よりもいち早く準備、対策を進めているとのお話でした。

売らないというビジネスモデルとそのメリットだけでなく、自分だったら、どういう会社で働きたいかと考えた上で実際の経営に移す姿は今後の為にも非常に有益な内容でした。

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